『ピンポーン』
家のインターホンがなったから、ドアを開けたんだ。
多分その時、私は人生の進むべき道を間違えたんだと思う。
#0「prologue」
「猿渡叔父さん…。」
「久しぶりですね、。」
ドアの前にいたのは
お父さんの弟の猿渡叔父さん。
「本当に、お久しぶりです。」
猿渡さんが家に来るのは本当に久しぶり。
「今日は少し、頼みたい事があってな。」
「兄にですか?今、兄は出かけてるんですけど……」
「いえ、お兄さんではなく、……君に用があってな。」
「私、ですか……。」
家に来ることだけでも珍しいのに、
私に用があるのはもっと珍しい。
「立ち話も何ですから、上がってください。」
「それでは……上がらせてもらいます。」
猿渡叔父さんを家の中に招いて。
台所でお茶を淹れた。
「ごめんなさい。粗茶しかなくって……」
「別によかったんですが…」
「いえ、そういう訳にはいきませんよ。」
猿渡さんを正面に、私は机を挟んで座った。
淹れたばかりのお茶を啜る。
「用、というのはですね……。」
「ズズズっ……」
「単刀直入に言うと………」
「我が、黒銀学院の臨時教師として、しばらく働いてほしいんです。」
へっ?
臨時教師……?
私がっ!?
「ちょっ!ちょっと待ってください!私まだ高2なんですけど……」
「そんなこと、わかっています。」
「だったらどうして………」
「全国模試トップの成績を持つあなたなら、臨時教師くらい勤めれるはずです。」
「お願いです、3年D組の奴らに日本史を教えていただけませんか?」
日本史……
たしかに、私の得意科目。
けど…学校もあるし………。
「学校の桃女の先生方にはもう、話を通してあります。」
「えっ――――?」
「から話を聞いていなかったのか―?」
「えっ…ええ、まぁ………。」
あの兄貴、そんなこと一言も言ってなかったんだけど。
「それに、あなたは教師志望らしいじゃないですか。」
「そうですけど……」
「だったら、臨時教師という立場を夢への一歩と思って、利用しませんか?」
たしかに、私の夢は教師、だ。
その夢に少しでも近づけるなら、
やってもいい。と少し思った、が、
やっぱり相手は、一年上の先輩だ。
少し、いやかなり怖い。
「お願いします。」
「…………わかりました。」
二つ返事でOKをだした。
やっぱり、恐怖心は大きい。
だけど、自分の夢に少しでも近づける。
そう思ったら、勝手にOKの返事を出していたんだ。
「早速、明日の朝からお願いしてもよろしいでしょうか…?」
「わかりました。」
猿渡叔父さんは嬉しそうに微笑んで、立ち上がった。
嗚呼、帰るんだな。と思い、私も立ち上がった。
なれない正座をしたせいで、足がビリビリする。
「それじゃ、明日からよろしくお願いします。」
「はい。」
冬なだけあって、もう外は真っ暗だった。
「もう」って言っても、7時だけどね。
7時は遅い時間帯に入るのかな?
そんなどうでもいいような事を考えていたら、
猿渡さんは私に一礼して、
駅へ向かって歩いていった。
失礼だったかな…?
「ふぅっ」
一息つこうと思い、冷蔵庫を開けた。
「あっ………」
プリンがないっ!
そういえば昨日のが最後だったんだっ!!
風呂上りにプリンを食べるのが私の日課。
プリン食べないと眠れないのっ!
「買いに行くか〜」
はっきりいってめんどくさいよ。
でも、プリンがないと困るし。
「行ってきまーす。」
私はプリンを買いに行くべく、
財布を持って近くのコンビ二に向かった。